三隅研次『なみだ川』(1967)※以下の文章、2008年5月に記す。 湯布院で観た映画 ― 『なみだ川』 主人公である姉のおしず(藤村志保)の性格設定は、のんきで(今で言うところの)天然ボケ。 この性格設定がストーリー上かなり秀逸だと感じられるのは、実は彼女は貧乏所帯で苦労し、実家に金をせびりに来ては家族を苦しめる放蕩者の兄まで居る…ということによる。 対する妹のおたか(若柳菊)はしっかり者。 また、姉が秘かに思う男に「姉と会ってやってくれないか」と妹が頼みこむ場面では、「すわ、例えばこのふたりがデキてしまうような展開だとちとマズいぞう」と観客としては小さく警戒したのであるが(すみません。ぼんくらな客なもので…)、そこはうまくしたもの、妹のおたかとこの貞二郎という男とは、多少なりとも理に聡いという点で言えばきっと「同族」なのであり、なるほどこういう二人は引き合わないものであろうよ。 さらに目を向けるべきは、このなみだが出るほど(タイトルに引っかけたわけではないが)に素晴らしい美術。 細川俊之演ずる貞二郎は、ニヒル風味がキャー素敵てなところ(誰もが認める細川の美声も、それに一役買っている)。 やくざな兄役の戸浦六宏の容貌には「若い頃から悪人顔だったんだなあ」とびっくりだが、そのどこまでもワルな兄が、おしずの覚悟を知り、最後の最後に「もう来ねえよ、あばよ」と家族の前からあっさり去っていく場面はひどく泣かせる。 あ、最後になったがこれを忘れちゃいけない。 あ、もひとつ最後に。 (追記)
by hamanokani
| 2016-01-11 12:13
| 映画の感想(件数僅少)
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